小羊の悲鳴は止まない

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流動的な愛の相関(『タイラー・レイク -命の奪還-』ネタバレ感想)

目次




初めに

どうも、レクです。
今回は今話題の『タイラー・レイク -命の奪還-』についてさらっと語っております。

この記事はネタバレを含みます。
未鑑賞の方はご注意ください。



作品概要


原題︰Extraction
製作年︰2020年
製作国︰アメリカ
上映時間︰117分


解説

「マイティ・ソー」「アベンジャーズ」シリーズのクリス・ヘムズワースが主演を務め、「キャプテン・アメリカ」「アベンジャーズ」シリーズの監督アンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が製作、「アベンジャーズ エンドゲーム」などでスタントコーディネーターを務めたサム・ハーグレイブが初メガホンをとったNetflixオリジナル映画。誘拐された少年を奪還するべく敵だらけの街に潜入する傭兵の死闘を描いたサバイバルアクション。裏社会の危険な任務を生業とする凄腕の傭兵タイラー・レイクは、ムンバイで誘拐された犯罪組織のボスの息子を救出するため、ギャングが支配するバングラディシュのダッカ市街地に向かう。敵のアジトに単身突入したタイラーは少年の奪還に成功するが、街中のギャングたちから猛追を受ける。絶体絶命の状況の中、卓越した戦闘スキルを駆使して戦うタイラーだったが……。Netflixで2020年4月24日から配信。
タイラー・レイク 命の奪還 : 作品情報 - 映画.comより引用





父と子の物語

わたくし、アクションに疎いんです。

いきなり何を言い出すんだ?とお思いでしょうが、今回の記事ではアクション映画にも関わらずアクションについて言及することができません。

なぜなら、アクションに疎いから(笑)



ということで、アクションに関しては詳しい方の意見や感想を置き気になられた方が有意義だと思いますので割愛させていただきます。





では何を語るのか?

ざっとしか見られてないのですが、「ストーリーが平凡」「物語が薄い」などアクション映画でよくありがちな批評もチラホラあったので、この映画『タイラー・レイク -命の奪還-(以下タイラー・レイク)』は決してそんなことはないぞ!?と言いたいがために書かせていただきました。

反論とかそういうものではなく、僕は今作『タイラー・レイク』の物語に心を揺さぶられたので「平凡」や「薄い」とは決して思わないという意思表示だと思って読んでいただけると光栄です。






目を見張るほどのアクションの連続、そしてどうやって撮ったのか驚いてしまうカメラワークと長回し。
ここにやはり目がいくのですが、冒頭でも申した通り僕はアクションに疎いのでそれほど得意とするジャンルでもないんですよ。


しかしながら、アクションが凄いことはわかる(笑)
そんな凄いアクションもあってどうしてもストーリー部分で弱く映りがちなのですが、今作『タイラー・レイク』はしっかりとその物語部分にも感動を呼ぶ父と子の話があるのです。





傭兵として危ない仕事を引き受けるタイラーには妻と息子がいました。
病気を患い、幼くして命を落とした息子。
タイラーはそんな息子の死から逃げていたのです。


序盤の崖から飛び降りて水に潜るシーン。
タイラーはこうすることで気持ちを落ち着かせ、尚且つ息子のことを思い出していたんですね。



そんなある日、麻薬王の息子であるオヴィが攫われたことから、救出の任務にあたります。
共に逃げることでふたりはまるで父と子のような疑似家族の絆を深めていきます。

タイラーはオヴィを亡くした息子と重ね、命を救うことで息子への贖罪にも近い感情を抱くようになる。
また、オヴィもタイラーに助け出されることで、麻薬王ではない自分を守ってくれる父親像をタイラーに重ね合わせる。



この心理的な変遷が顕著に示されるシーンが、傭兵とタイラーが揉み合いになる場面です。

タイラーを救うため、オヴィは傭兵を射殺します。
その傭兵にも家族があり、そんな彼を射殺したことで麻薬王の父と自分自身を重ねてしまう。
また、父という存在を失うであろう彼の家族と自分自身とも重なってしまう。

やり場のない悲しみと罪の意識を抱いたオヴィに寄り添うタイラーもまた、家族を失った悲しみと罪の意識を抱く者。
そんなふたりの姿が胸を打つ。




原題の意味

原題『Extraction』

意味は色々ありますが、今作においては恐らく「抽出」という意味であろうと感じましたので、それを前提に話を進めていきます。



上記で記述しました。

序盤の崖から飛び降りて水に潜るシーン。
タイラーはこうすることで気持ちを落ち着かせ、尚且つ息子のことを思い出していたんですね。


このシーンは、今作『タイラー・レイク』のラストシーンと繋がります。
単純にタイラーとオヴィの心の繋がりとして解釈できる。



プールの高台から飛び降りたオヴィが水面に浮上した先にタイラーらしき人物が見えて幕を閉じます。


あ、タイラーは少年に撃たれて死んじゃってるんでこれはタイラーが生きてたよ!ってわけではないと思われます。
恐らく、オヴィの心の中にタイラーという父にも近い存在がいること、そして一度は息子から逃げたタイラーがオヴィを見守っていること、を視覚的に見せた幻影でしょう。

この点に関しては賛否あると思いますが、個人的にはいいんじゃない?くらいです。





話を戻しますが、原題の意味は「抽出」
今作『タイラー・レイク』では"水"がキーワードであることは間違いないですね。


ここで、Twitterに上げた感想を。


そうです、水と感情というものは一見無関係であるように見えますが密接な関係があるんですよね。



例えば、感情というものは表面的な部分でも表れます。
感動して"涙を流し"たり、興奮して手に"汗握る"など、感情によって体の水分が作用されることがある。
感情と水との間には共起関係があり、感情の起状と相関であると言えます。


また、勇気や愛が"溢れる"や不平を言うことを"零す"と言ったりしますよね。

こういった比喩は、水という身近なものを媒介とすることで第三者から見ても理解がしやすいという利点がある。



それから、イスラムにおいて水は体を清めることでもあるんです。


ラホールのBadshahi Mosqueの洗い場でウドゥを行う人々

ウドゥまたは小浄(英語: Wudu、アラビア語: الوضوء al-wuḍūʼ )とは、イスラム教で礼拝の前に体の一部を水で洗う清めの行為のこと。
ウドゥ - Wikipediaより引用



ウドゥーのための沐浴施設(イエメン)

沐浴(もくよく、ablution)は、からだを水で洗い潔めること。宗教的な儀式を指すことが多い。乳児の体を洗うことも含まれる。
沐浴 - Wikipedia



今作『タイラー・レイク』においても、何度も言うように視覚的に凄いアクションを見せられるとどうしても心理的に訴える物語は弱く見えてしまいます。


そこで、水を感情のメタファーとして組み込むことでアクション描写へのノイズにならず、観客の心へスッと"染み入る"ような物語になっているのではないでしょうか?

そして、ラストシーンはオヴィの悲しみと罪を"洗い流した"ことを意味するのではないでしょうか?



タイラーの抱く過去の悲しみと罪、それを抽出するオヴィ。
悲しみと罪を抱いてしまったオヴィから、それを抽出するタイラー。

"贖罪"であり"救済"である"流動的な愛の相関"が優しく僕の心を揺さぶったんですよね。




終わりに

と、さらっと感想を書きましたが
とりあえずこれだけは言っておきたい。

ゴルシフテ・ファラハニはいいぞ!!!



『バハールの涙』でも強い女性を演じておられます。



トイレで報復とか最高かよっ!

ゴルシフテ・ファラハニはいいぞ!!!



ということで(?)
Netflixオリジナルはダメだ!なんて言われたりしますが、本当にそんなことないんですよ。
掘り出し物は結構あるんです。
今作『タイラー・レイク』のような映画が作られたことで更に「Netflixオリジナルも捨てたもんじゃないよ!」と言えるのではないでしょうか?



最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。




Netflix映画「タイラー・レイク 命の奪還」