小羊の悲鳴は止まない

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宣戦布告と下剋上(『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』ネタバレ考察)

目次




初めに

どうも、レクです。
私は元気です。


暫くの間、更新が停滞してましたが
久しぶりのブログ更新となります。

今回は公開から少し経ってしまいましたが、ジェームズ・ガン監督作『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』について語っております。

よろしくお願いいたします。


この記事にはネタバレが含まれます。
未鑑賞の方はご注意ください。




作品概要

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原題︰The Suicide Squad
製作年︰2021年
製作国︰アメリカ
配給︰ワーナー・ブラザース映画
上映時間︰132分
映倫区分︰R15+



解説

「バットマン」や「スーパーマン」を生んだDCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦う姿を描いたアクションエンタテインメント。デビッド・エアー監督により映画化された「スーサイド・スクワッド」を、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで大きな成功を収めたジャームズ・ガン監督が新たに描く。ジョーカーと別れて彼氏募集中の身になり、ますますクレイジーになったハーレイ・クインを筆頭に、最強スナイパーのブラッドスポート、虹色のスーツに身を包んだ陰キャのポルカドットマン、平和のためには暴力もいとわないという矛盾な生き様のピース・メイカー、ネズミを操って戦うラットキャッチャー2、そして食欲以外に興味のないキング・シャークという、いずれも強烈な個性をもった悪党たちが、減刑と引き換えに、危険な独裁国家から世界を救うという決死のミッションに挑む。出演は、前作に続いてハーレイ・クイン役を演じるマーゴット・ロビーほか、イドリス・エルバ、ジョン・シナ、ジョエル・キナマンら。サメの姿をしたキャラクター、キング・シャークの声をシルベスター・スタローンが担当した。
ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 : 作品情報 - 映画.comより引用




短評

本作『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』(以下、『新スースク』)を鑑賞するにあたって、デヴィッド・エアー版『スーサイド・スクワッド』(以下、『旧スースク』)を再鑑賞しました。

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(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC

「バットマン」や「スーパーマン」などと同じDCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦う姿を描くアクション作品。バットマンをはじめとするヒーローたちによって投獄され、死刑や終身刑となった悪党たちが、減刑と引き換えに「スーサイド・スクワッド(自殺部隊)」の結成を強制され、危険なミッションに挑む。ウィル・スミスや「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のマーゴット・ロビー、「ロボコップ」のジョエル・キナマンら豪華キャストが共演。バットマン最大の宿敵として知られ、これまでにジャック・ニコルソン、ヒース・レジャーが演じてきたジョーカーを、「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー賞を受賞したジャレッド・レトが新たに演じる。監督は「フューリー」のデビッド・エアー。
スーサイド・スクワッド : 作品情報 - 映画.com



というのも、『旧スースク』が公開された当初、DCコミックに疎い自分からすると、キャラクターに思い入れがないヴィラン集団と脚本の弱さで印象に残らない作品となっていたからです。

ただでさえヴィランがヴィランヴィランしていないのに、ヴィランよりヴィランヴィランしてるおばさんが出てきて、ヴィランの変な仲間意識がそのヴィランヴィラン感を更に下げてしまっていると感じました。


そう、本作『新スースク』にも登場しているこの方ですね。
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アマンダ・ウォーラー(ビオラ・デイビス)



この、ヴィランによるヒロイズムというのは過去作のDCEUでも課題だと思っています。
例えば、本作『新スースク』にも登場するハーレイ・クインが主人公の映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(以下、『BOP』)。

『BOP』でも、あくまでヴィランのはずのハーレイ・クイン自身がヴィランヴィランしていないんですよね。
ちょっと捻くれた単なる良い奴なんですよ。
性格が変わったんじゃないか?ってくらい。


その理由はこちらの記事にも書かせていただいてますが、『BOP』よりは『旧スースク』の方がまだ、ハーレイ・クインはヴィランらしかったとさえ思うほど。





そう、このヴィランヴィランしていないという弱点に関して、ジェームズ・ガン監督は新たなキャラクターを交えて、『旧スースク』でのヴィランヴィランしてないことを好転させてガンガンやってくれた!(これが言いたかっただけ)

本作『新スースク』を評価する点のひとつがここなんです。






考察

さて、ここからは個人的な解釈になります。
一意見としてお読みいただければ幸いです。



本作『新スースク』での決死部隊のミッションは減刑と引き換えに危険な独裁国家から世界を救うというもの。

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何より冒頭が素晴らしい。
『旧スースク』から続投のキャプテン・ブーメラン率いる第一決死部隊。
彼らは敵を引きつけるエサであり、『新スースク』で登場したブラッドスポート率いる第二決死部隊が任務を遂行する。

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彼らには2つの部隊に別れていることを知らされておらず、第一決死部隊はキャプテン・ブーメラン含む『旧スースク』メンバー、ハーレイ・クインがいる。

この第一決死部隊が早々に壊滅することで、決死部隊は捨て駒であるということを一瞬で観客に理解させる。
そして、尚且つジェームズ・ガンは
「『旧スースク』は終わり。ここからはオレの映画、『新スースク』が始まるんだ。」
と言わんばかりに本編へと入っていくのだ。


そんなこんなでラストシークエンスまでの導線はアクションあり、グロあり、ブラックコメディありで飽きることなく展開され、ジェームズ・ガン監督のやりたいようにやったであろう娯楽映画を体験できます。





ここで、短評でも語ったヴィランによるヒロイズム問題ですが
MCUとDCEUのヒロイズムの違いは以前に話したことがあります。

それはクリストファー・ノーラン監督作『ダークナイト』。
バットマンは英雄的行為と犯罪行為の二面性をテーマに描かれる。
この『ダークナイト』とほぼ同時期(2008年)に公開されたジョンファブロー監督作『アイアンマン』と比較するとわかりやすい。

アイアンマンの場合、恐らく英雄的行為がたとえ法を犯す超法規的な暴力であっても許諾され、劇中で肯定される。
ひとつの大きな要因はトニー・スタークという人物の認知とアイアンマンが絶対的ヒーローとなるから。
正義のために必要であり、だからこそ正当化され、それがなければ正義が悪に打ち負かされてしまうという保守的とも取れる形を取らざるを得ない。
MCUに関しては後にルッソ兄弟の『シビル・ウォー』でその疑問に言及する形になるんですが。

一方で、DCEUのバットマンは正義のために法を犯す超法規的な暴力でさえも、正義として行使する。
それに伴い、国民からの反感やヒーローとしての支持を失い、葛藤することとなる。



本作『新スースク』ではヴィラン要素によって超法規的な暴力をヒロイズムではないものとして描ける。
要はヴィランなら極論、何をしても許されるのだ(笑)

このヒーローではなくヴィランを描く強みとジェームズ・ガンの相性が良すぎる。
グロ描写とブラックコメディのバランス、匙加減も流石といえます。



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また、『旧スースク』や『BOP』の良さを引き継ぐハーレイ・クインが特に良かった。
ジョーカーと別れて彼氏募集中の身になっているとのことで、時系列は『BOP』よりも後の設定。
『旧スースク』での吊り下げプレイ、『BOP』での柔軟性を活かした派手なアクション、これらを見事に本作『新スースク』で披露して見せている。

つまり、冒頭で『旧スースク』から『新スースク』へ移行するぞというジェームズ・ガン監督の意思表示を見せておきながら、ちゃんと過去作を踏まえた上で過去をなかったものとしないで本作のハーレイ・クインを描ききっているんです。



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それに加えて、リック・フラッグとピースメイカーが互いの正義のぶつかり合いで仲間割れをした時、一番に目撃したのはラットキャッチャー2。

考え過ぎかもしれませんが、これはディズニーに居たジェームズ・ガンがディズニーから受けた不当解雇を自分自身が俯瞰的に見ている構図のようにも感じる。
そんなラットキャッチャー2がピースメイカーに殺されそうになったところ、タイミング良く救ったブラッドスポートこそワーナー・ブラザーズ映画。



ジェームズ・ガン監督は当初の結末を変更したとも語っています。

当初はポルカドットマンではなく、ラットキャッチャー2を殺す予定だったという。ガンはVarietyとのインタビューで、「変化があった。私がピッチしたオリジナルのエンディングでは、1人のメインキャラクターが死に、1人のメインキャラクターは死ななかった。そして、死んだ主役はラットキャッチャー2だった。彼女はとても優しくて、それだとあまりにも暗すぎると感じた。ポルカドットマンが嫌いなわけではない。愛している。ただ、( ラットキャッチャー2を)殺すことはできなかった。だから我慢した。」と述べている。
ジェームズ・ガン監督が映画『ザ・スーサイド・スクワッド』のエンディングが当初の構想から変更されたという | Amecomi Info(アメコミ・インフォ)



これは、ジェームズ・ガン監督がディズニーに解雇された過去。
それを受け入れた上で、ディズニーの掌の上では決してできないことをワーナー・ブラザーズで好き勝手にやる。

『旧スースク』同様にあまりヴィランヴィランしていないブラッドスポートとラットキャッチャー2というキャラクターが居たからこそ成り立つこの物語に仕上げた。

言い換えれば、ラットキャッチャー2がジェームズ・ガン監督の意志そのものの反映だと思うんですよ。



それを踏まえた上で

ラスボス的存在のスターロ大王に勝利した彼らの武器、それが大量のネズミと一本の槍。

それが何を意味するのか?
それは、"底辺が集まれば巨悪を黙らせることができる"に集約される下剋上だと思うんです。

これも過去を受け入れ、今を描いたジェームズ・ガン監督が、今後はディズニーではなくワーナー・ブラザーズでやっていくという決意表明。



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以上のことから
本作『新スースク』はジェームズ・ガンの MCUヒーロー映画への宣戦布告、皮肉交じりのDCEUヴィラン映画だと思っています。




終わりに

ということで本来このブログの趣旨でもある
「好きな映画を好きな時に好きなように語りたい。」
をモットーに不定期ながら更新を再開していきますので、今後ともよろしくお願いします。

ありがとうございました。



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